馬たちとおまわりさん
引っ越してきて、あっという間に3年半が経った。
家に表札をつけていないけど、自治会に入っていれば近所では名前などもわかっているので、特に気にしていなかった。
2年ほど前、楽が来た頃のこと、平日におまわりさんが尋ねてきた。
ちょうど母がうちにいたので、話をしたところ、近くの交番のおまわりさんで、たまに近所の様子を見てまわっているそうだった。
名前や家族構成を聞かれて、楽のことも、名前と年齢、性別をメモしていったらしい。
ペットも家族だから、ということなのかもしれない。
近所の人の話によると、うちの周りは警察官や元警察官という家が5軒くらいあるらしい。
田舎ということもあって、あまり警察官は見かけないと思っていたのだが、一般企業の仕事が少なく、農家も減っていることを考えれば、公務員が多いと感じても不思議はないかもしれない。
馬房を作るために通ってくれた大工さんが、うちに来る途中、スピード違反で捕まったことがあった。
スピード違反は、現行犯でないと捕まらないらしい。
大工さんは振り切って逃げようとした。
若い頃はカーレースが趣味で、ターボ付きの軽トラという、めずらしい車に乗っていた。
でも、あいにく行き止まりだったそうで、パトカーにウァンウァンとサイレンを鳴らされて追いかけられた挙句、御用となった。
当時、大工さんの本職はトラックの運転手だった。
にもかかわらず、免停というマズイ自体になった。
薄給で、免停の講習費用をカンパするような苦しい経済状況だった大工さん。
今は建材屋の社長になっていて、いい車に乗って安全運転している。
そんなことがあったので、うちに遊びに来たサッカー仲間に、道中スピード違反に気をつけてくれと言った。
「こんな田舎に警察がいるわけないだろう」と半信半疑な様子で言っていたので、そうでもないということをよく説明しておいた。
大工さんが昼寝していると、楽は必ず帽子をくわえて持っていった。
2014年2月。未完成の馬房。70センチの積雪があった。