楽と詩が生まれた牧場
2014年に入って、馬房や放牧柵がある程度出来上がってきたころ、いよいよ具体的に馬の購入について考えるようになった。
元々、道産子への思い入れが強かったので、他のどの種類でもなく、道産子を飼うつもりだった。
馬を購入する場合、まず馬喰(ばくろう)と呼ばれる人から譲ってもらうことを考える。
関東にも馬喰さんは何人もいる。
馬を右から左へ流してマージンを稼ぐわけだが、乗馬クラブを兼ねているところもある。
何人かの馬喰さんには、道産子がほしいと言って、当たってみたのだが、とりあえず自分のところで抱えているポニーを売りつけてきたり、話の内容もウソが多かったため、あまり気が進まなかった。
どちらにしても、道産子のことを詳しく知りたかったため、北海道に何度か足を運んでみた。
道産子を生産している牧場は、今ではとても少なくなっている。
乗用馬としては、乗馬クラブはサラブレットを欲しがる。
肉馬にするには、背丈が低い分、大型のばん馬に比べると、トラックで運ぶコストがかかってしまうという。
そのため、種の保存という目的で、半分趣味のような形で愛好家が生産していることが多く、商売として成り立つ状況ではないということだった。
北海道で、定期的に行われる馬のセリも見に行った。
競走馬ではなく、小さなポニーから大型のばん馬まで売買されるセリがあるのだ。
セリでは、一瞬で売買が決まってしまうため、私のような素人がいきなり行って、馬を買えるような状況ではなかった。
そこで出会った馬喰さんに、「あんたみたいな素人は、どうせ馬喰にだまされるんだから、こういうちゃんとした先生から買ったほうがいい」と、北海道大学が出荷している馬たちのところに連れて行ってくれた。
北大の職員さんは、私が何者なのか、かなり怪しんだと思う。
こちらとしては本気だったから、大事に飼育していくつもりだということ、飼育環境や準備している設備などを詳しく説明した。
そして、最終的には、実際に牧場を見学させてもらい、そこで選んだ馬を譲ってもらうことになった。
北大の静内牧場。新冠御料牧場から道産子と敷地の一部が引き継がれたそうだ。
セリ待機場での道産子。
セリの様子。こちらは大型のばん馬。