馬の知能
馬は、犬や猫に比べて、記憶力がいいが、頭はよくない、とよく聞く。
一度見たものは忘れないが、人間のことは、個体識別まではできない、という話もある。
だけど、本当はもっとずっとわかってるんじゃないか、と思うことがある。
楽と詩は、かわいがってくれるご近所さんのことは、誰がどこに住んでいるのか、特に放牧場から見える家に住んでいる方のことは、よく知っていると思う。
ときどき草を刈って放牧場に投げ込んでくれる方の家のドアが開くと、馬たちはあわてて出てきた人の姿を追いかける。
草刈り機を動かしはじめると、さらにテンションが上がり、いつ草がもらえるのか、ソワソワと落ち着きがなくなる。
個体識別どころか、エサにつながる行動もいろいろ知っている。
休みの日は、朝遅く起きて、馬たちに見つからないように、こそこそテレビをつけたりすることがある。
でも、なぜか馬たちは私が起きてきたことに気づいて、2頭で寄ってきて、家の中の私を見つめて、早く朝飯を持って来いとばかりに、プレッシャーをかけてくる。
たぶん、テレビをつけた音、トイレのドアを開け閉めする音で気づくのだと思う。
少なくとも、耳がいいことは間違いない。
人によって、態度も違う。
馬房を作ってくれた大工さんが、楽が小さいころ、よく遊んでくれたのだが、楽が飛びかかってきてもかまわず遊んでいた。
危ないからやめさせてほしいと言っても、「うちの猫もこうやって遊んでる」と言ってきかなかった。
春先に、久しぶりに大工さんが来たときのこと。
楽は大工さんに飛びかかっていった。
他の人には、もうそんなことはしなくなっているにもかかわらず…。
大工さんなら飛びかかってもいい、と覚えていたのだ。
すっかり大きくなった楽に飛びかかられた大工さんは面食らい、私も冷や汗をかいた。
だから言ったじゃん…と、一応文句を言っておいた。
楽が鞍付けの練習をしていたころ