冬の馬たち 冬の水
12月と年が明けた1月とでは、朝の寒さが全然違う。
去年の1月はこんな感じだった。
朝起きて、エサをやって、水を足そうと思ったら、水道が凍っていて水が出ない。
仕方なく、家の水道でぬるま湯をくんで、エッチラオッチラ運び、水桶にあける。
やっぱり冷たい水よりも、ぬるま湯のほうが馬はよく飲んでいる。
水桶は、20Lのものが2つ。
これをいっぱいにしておく。
夜、家に帰ってきてエサをやるとき、水道はまた凍っている。
週末は朝遅く起きるけど、8時ごろではまだ凍っている。
水道は、1~2月はまったく役に立たないなと去年は思っていた。
ところが今年はちょっと違った。
朝、水道が凍っていた日は数えるほどしかなかった。
寒い日が少ないのもあるだろうし、ホースを頑丈なものに変えたのもよかったのかもしれない。
特に、今の詩は授乳中で、水を飲む量が増えている。
楽の2倍は飲む。
エサが乾草ということもあって、1食ごとに10L以上飲んでいると思う。
陽もまだおっぱいを飲んでいるけど、水もよく飲むようになっている。
そういうわけで、今年、水やりがちょっと楽になっているのはとても助かっている。
ところで、水桶が凍っていると、神経質な馬は、水を飲めずに脱水症状をおこす場合があるそうだ。
道産子の場合は、氷を鼻でバンバン砕いて飲んでいる。
この辺も手間のかからない道産子のたくましさを感じる。
今日もみんなでお昼寝
馬たちと整体
最近、楽が速足や駆け足を継続せず、勝手にやめてしまう状態になってしまった。
週末には少し乗ってみたり、調馬索といって、丸馬場でリードをつけて長鞭で追い運動をやってみたりしている。
相変わらず、一度止まってしまうと、長鞭で追ってもなかなか動かない。
長鞭の先がちょっとくらい当たっても、「平気だもーん。動くのヤダもーん」という感じで動かない。
緊張感がまったくないようだ。
ワガママもあると思う。
そのほかに、以前、後ろ足を痛め、跛行(ビッコの状態)していたことがあった。
もう治ったと思っていたけど、よく見るとまだ少し跛行していることに気が付いた。
獣医さんに相談したときは、「たいしたことないからほっときなよ」と言われた。
確かに重症には見えないけど、やっぱりちょっと気になる。
もしかして、整体やカイロなら違った見方があるかもしれない。
去年、ひどい腰痛になり、病院、整体、針治療とあちこち通ってみた。
どこへ行ってもよくならなかったのが、今通っている整体で、あっさり治ってしまった。
そこで先生に、ペット整体をやっているか聞いてみた。
やっている、ということだったので、出張整体をお願いしてみることにした。
先生は、少しびっくりした様子だった。
馬には施術したことないということだったけど、詳しい事情を説明したところ、いろいろ考えて引き受けてくださった。
私も馬にどう施術するのかという好奇心もあるし、効果があればいいなと思っている。
それはそれとして、速足や駆け足を勝手にやめてしまうクセがつくとよくない。
そこで、新しい方法を考えた。
長鞭の先に、買い物袋を付けてみた。
いつものように、丸馬場でリードを付けて長鞭で追ってみた。
バタバタたなびく買い物袋を見て、楽は緊張していきなり走り出した。
落ち着いてくると、一定のテンポで速足を継続している。
いい感じだ。
止まりそうになったとき、すかさず買い物袋をチラつかせれば、真面目に速足を続ける。
多少の緊張感を保つことができたようだ。
しばらくはこの方法で軽い運動をさせようと思った。
馬装した楽。
長鞭の先に買い物袋を付けてみた。
昼寝も丸馬場で。
馬たちと稲わらロール
近所に、長く酪農をやっている方がいて、牛も馬も同じ大型動物ということで、時々お話を聞いて勉強させてもらっている。
秋以降は、田んぼや畑の仕事もあり、忙しそうだったので、なかなかお邪魔する機会がなかった。
先日、久しぶりにうかがったところ、もう仕事が落ち着いたそうで、しばらく話をしているうちに、刈り取った稲わらの話になった。
刈り取った稲わらは、ロールにして、ビニールを巻いてしばらく置いておく。
そうするとアクが抜けて食べやすくなるらしい。
牛たちはよく食べるそうだ。
今年刈り取ったロールを保管するので、去年の余ったヤツがあるけど、いらない?と聞かれた。
というわけで、ひとつ譲ってもらうことになった。
稲わらロールは、高さ、直径ともに1.2メートルあって、人力では運べない。
これを重機で運んでもらった。
酪農で使用する重機は、見たことのないものばかりで、写真を撮らせてほしいとお願いした。
馬たちは、楽だけは重機を怖がっていたけど、詩も陽も驚いたりはせず、稲わらは早速食べていた。
一般家庭に入ってくると迫力がある。
この後、下に落として、倒して軒下に入れた
馬たちと牧草
馬たちのエサは、近くの酪農協会から乾草の牧草を購入している。
牧草の種類はいろいろあるけど、うちではイタリアンストローという牧草を主に与えている。
最初は、チモシーという牧草を与えていた。
チモシーは栄養価が高く、馬たちの好物だけど、うちの馬のように、食べて寝て遊んでいるだけの道産子の場合、ちょっと栄養価が高すぎるらしい。
道産子はもともと、北海道で雪を掘り返して笹を食べて生きてきたような馬だから、少ない栄養分で問題ないそうだ。
以前まだチモシーを与えていたとき、予防接種に来た獣医さんに、これ以上太らせないよう注意された。
獣医さんは、その辺の草刈って与えておけばいいよ、と言っていたけど、草を刈る手間と時間はとても確保できない。
そこで、チモシーに比べたら栄養価の低いイタリアンストローに変えたのだった。
値段のほうは、チモシーが1キロ約70円なのに対し、イタリアンストローは1キロ30円を切るくらいで、飼い主のお財布にも優しい価格になっている。
馬たちには、1日1頭4キロくらい牧草を与えている。
よく、馬を飼うってお金がかかるんでしょう?といわれるけど、この話をすると、会社の先輩から「うちの犬のほうがエサ代高いわよ!」と言われる。
ひとつ、ワンちゃんより苦労があるのは、牧草の重さだと思う。
何頭も飼育している牧場なら配達してもらえるが、うちのように少ない頭数だと、軽トラで自分で取りに行く。
積むときはフォークリフトみたいなので積んでもらい、帰ってきて自分で下ろす。
チモシーの場合、1梱包で約30キロ。
これは何とか持って運べる。
イタリアンストローの場合、1梱包で約55キロ。
これはどうにもならない。
ここは工夫しかない。
軽トラの荷台からうまく一輪車に落として、物置までどうにか運んでいる。
陽がエサを食べるようになった頃、よく物置に入りたがった。
たまに思い出すとハーネスを付けて、詩と一緒に歩く練習をやっている。
この日は夕焼けがきれいだった。
陽の自己主張
陽は、最近は楽と遊ぶことが多くなっていて、楽が近くにいないときは、ヒヒーンと鳴いて呼ぶことがある。
人間が近づいてもヒヒーンと鳴いて呼ぶことがあるし、自己主張が強くなってきたなあと思う。
しかも、人間からチヤホヤされているせいか、自分が構ってほしいときは、いつでも構ってもらえる、と思っているようだ。
先日、クラさんが丸馬場で詩に乗っていた時のこと。
私もその様子を見ていると、陽は、誰も相手にしてくれないせいか、しつこくまとわりついてきた。
噛み付いてきたり、走ってきて飛びかかってきたりする。
コラッと怒ると、反省しているのか、次の策を練っているのか、後ろを向いて3秒くらいうつむいている。
そして、めげずにまた遊びに来る。
この様子がまた、小さい頃の楽に似ている。
クラさんが詩に乗っている間、楽に乗ろうと思い、楽を連れて畑の放牧場へ入った。
このときも、陽は放牧場に入ってきてしまい、仕方なくそのまま出入り口の扉を閉めた。
陽は、楽が動き出したとたん、楽に飛びかかって遊ぼうとする。
馬も人も全然集中できない…。
それに飽きると、放牧場から出たくなったらしく、ヒヒーンと鳴いている。
いつも振り回されてしまい、ため息が出るときもある。
でも、こういうのも今だけなんだろうなあと思うと、時間を惜しむ気持ちになった。
楽に乗りながら写真を撮ってみた。遊ぼうよ!と楽に飛び掛ったり噛んだりする陽。
噛んでやる~
ずっとまとわりついていた。
クラさん、今年初の流鏑馬稽古
日曜日、朝8時ごろ起きたら、雪が降っていてギョッとした。
まさか積もるのかなと思った。
夕べ遅く、クラさんから、明日行ってもいいかというメールが来ていたことに気が付いた。
かまわないけど、雪が降っているよと返信して、馬たちのエサをやりに行った。
ゆうべ、明日は寒くなるという予報だったから、馬房にもみがらを多めに入れておいた。
馬たちのお腹には、もみがらがついていたから、たぶん夜は馬房で寝たのだと思う。
でも、朝出て行ったときには、薄く雪が積もった丸馬場で朝寝していた。
昼過ぎにクラさんが到着。
まずは弓の練習、そのあとはいつものように、馬の練習をした。
今日は、詩を馬装するところから練習してもらった。
まず、馬にリードを付けるために、馬の頭に無口を付ける。
これが意外と難しいらしい。
コツがわかればすぐ付けられるけど、詩が「コイツはわかってないな」と人をバカにしている場合、首を振って、なかなか付けさせてくれない。
四苦八苦して馬装して、やっと丸馬場でまたがった。
いつものように、時間をかけてゆっくりと歩く。
そしていつもなら、歩いて終わりにしてしまうけど、今日のクラさんは、ちょっと速足をやってみたいと、詩に速足の掛け声をかけた。
ハラハラしたけど、何とか大丈夫だった。
自分でもバランス感覚が悪いと言っていたけど、何回も乗っているせいか、馬の動きにも慣れたのだと思う。
速足に慣れたら、いずれは駆け足がしたいと、新年の抱負を話した。
寒い朝でも、朝ごはんには元気に集まってくる
放牧場は少しだけ白くなっていた。
少しだけ速足ができた。
陽が生まれた日、の翌日
陽の誕生とは直接関係ないけど、激動の半生を生き、地元では半ば伝説となっている人がいる。
車屋のマコっちゃんのオヤジさんの話を、ほんの少しだけさせてもらおうと思う。
あれは、陽が生まれた日の翌日、去年の9月10日のことだった。
前日は母と一緒にずっと子馬を見ていて、休んだのは深夜になってからだった。
朝6時半ごろ、どうも庭に人の気配がするなあと思った。
しばらくして、もう起きていた母の、あら!という声が聞こえた。
庭にいたのは、マコっちゃんのオヤジさんだった。
オヤジさんは以前、何度かうちに遊びに来たことがある。
そのとき、うちの庭が草ぼうぼうになっているのを見て、ずっと気にかけてくれていた。
何しろ去年は、年明けから父が倒れ、6月に他界し、ただでさえロクに草刈りをしないうちの庭は、忙しさでまったく手を入れることができず、確かにすごいことになっていた。
オヤジさんは朝っぱらから、黙々と草を刈ってくれていたのだ。
まだ暑い季節で心配したが、オヤジさんは時々、「冷たいお茶ちょうだい!」と元気に声をかけてきた。
お茶を飲みはじめれば2時間ぐらいパワフルに語り、そしてまた草刈りをする。
すさまじい体力だ。
本職は車屋さんだけど、犬の訓練士としてもプロレベルで、動物にも詳しいオヤジさん。
子馬を見に、ご近所さんや友達が来るたび話しかけていた。
中には、このオヤジさん誰…?と驚く人もいたけど、オヤジさんはそんな小さなことは気にしない。
オヤジさんは、「この家には何もないからね!」と、趣味で集めているコレクションを持って来て、玄関に飾ってくれた。
何もなかった殺風景な玄関は、一気に華やかな雰囲気になった。
最後の最後まで、油断は禁物だった。
夕方帰ろうとしたオヤジさんの車は、エンストしていた。
「息子さん呼びましょうか?」と、思わず母も爆笑していた。
愛すべきオヤジさん…。
会社の先輩に、この日の出来事を延々とメールしたところ、「ところで子馬はどうしたのよ?子馬は」と返信がきた。
子馬の誕生をも上回るインパクトを残してくれたオヤジさんのおかげで、この日もまた、楽しくて、少し変わった思い出ができた。
生まれた翌日の陽は、”馬”というより、別の生き物みたいだった。
胎内で母体を傷つけないため、蹄は白っぽいカバーのようなものが覆っていた。蹄餅というらしい。
まだあまり目が見えなかったせいか、人間にも警戒心があり、詩のそばを離れなかった。
オヤジさんの店。オヤジさんはミニマリストにはなれないと思う。
先日、オヤジさんの新しい夢を教えてもらった。実現したら、と考えると、ワクワクしてしまうような楽しい夢だった。
オヤジさんが来た後のうちの玄関。オヤジさんの魂を感じる。